CA6での留学を通じて国家の環境施策について考える非常によい機会を与えられたと思う

私は留学を通じて社会を変えるためには時間をかけて教育を行き渡らせる他にない、と感じた。私はマレーシア工科大学 (Universiti Teknologi Malaysia) に7月から2月末まで約7か月間留学し、現地の大学では主にサステナビリティについての講義を受講していた。授業では現地学生とのグループワークを行い、レポートやプレゼンテーションを作成していた。トピックとしては主にGreen Policyと呼ばれる環境政策やGreen Economy (環境経済)が中心だったが、その中で印象に残っているのはマレーシアの水道事業である。マレーシアは水道の普及率が高い。実際にクアラルンプールのマレー系飲食店では、手で直接料理を食べる習慣があることもあり、小さい店舗であっても手洗いする水道がかなりの割合で設置されている。しかしながら、マレーシアの水道事業はその運営の非効率性を指摘されており、Non Revenue Water (無収水)と呼ばれる水道料金に加算されていない水が40%近くもある。ちなみに日本は世界的にも漏水に厳しく、その値は10%未満を保っており、欧州諸国では10~20%程度と言われている。Non Revenue Waterは水資源の浪費であるだけでなく水道事業の採算性にも直結する。2004年に上下水道の改革事業が開始され、専門の国家機関が設置されるなど、より国家レベルで水ガバナンスへの取り組みが進められたが、現在に至るまでNon-Revenue Waterは30%を一向に下回らない。その原因を調べてみるとポリシーを実現できる十分な教育を受けた現場の技術者の不足が原因の一つとして指摘されていることが分かった。予算が下りても、そのほとんどがパイプの交換のみに費やされてしまい、真に有効な対策が行われないのだという。このように政治改革が行われて新たに予算が投じられても、社会の準備が出来ておらず結果が出ないという事態は東南アジアにおいて珍しいことではないようだ。マレーシアでも道端のごみを多く見かけるが、カンボジアのごみ管理は更に状況が深刻だ。カンボジアではごみを道端に捨てる習慣があるため、ごみ収集の効率が悪くコストがかさむ上、分別されないためにごみが水分を含み、衛生状態の悪化と処理効率を悪化させている。しかしながら、国民がごみをどうにかしたいという意識が低いため料金を払ってサービスを向上させるという方向に向かわないのが現状だ。私は発展途上国における問題は政府の方針と資本の投入がなされれば解決するものだ、と考えていた。しかし留学で現地に赴いて市井の様子を肌で感じながら上記のようなことを学ぶにつれ、問題はもっと深いことが徐々に分かってきた。これは将来の日本におけるリスクでもある、と感じる。国民の意識の変化や専門的な人材の不足によって徐々にこれまでの状況が維持できず、どうにもならない状態が起きるかもしれない。CA6での留学を通じて国家の環境施策について考える非常によい機会を与えられたと思う。悩んでいる人もぜひ海外で学習する機会を獲得してみてほしい。

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