行ってみなければ分からない

私がCA6に参加したのは、新たな経験を通し刺激を受け、自分自身の考えや価値が変容することを期待していたためです。といっても、どのように変容するのかは予想していませんでしたので、終わってみるまで分からないギャンブルのような感覚です。極めて打算的です。というのは、もともと私はCA6に参加するつもりはなかったのですが、時の運と巡り合わせで参加できることになったという事情もあります。

 

タイでの滞在を振り返れば、日本からは見えない文化があり現実がありました。日本国内でもタイは旅行先として一定の人気を誇り、タイ料理も口にする機会は稀ですが高い評価を得ているでしょう。さらに、発展の著しいバンコクには日系企業が多数進出し、ASEANの存在感も相まって決して“遠く離れたよく分らない国”という認識ではないはずです。しかし、実際にタイに滞在すれば、解像度の低いイメージは打ち砕かれ、より鮮明なタイという国、人、文化が(部分的にではあるが)見えてきます。滞在地がバンコクからは約400km離れたコンケンということもあり、“タイらしいタイ”を実感することができました。現地に行き、文化に触れ、人と交流し、時を共にしなければ見えてこないことばかりです。自分の目で見て、聞いて、触れることが持つ価値を再認識することができたのは、最も大きな収穫でした。

 

大学院生として、自身の研究は一つの不安材料でした。タイという国は私の研究に直接的には関係がありません。現地での授業が関心とは離れていることも少なくありません。研究活動に対しては、タイにおける教育や格差問題に触れる中で、新たな視点と洞察を得ることができたと思っています。近年、持続可能な開発目標(SDGs)が叫ばれる中で、それらの言葉や目標ばかりがひとり歩きしている印象を受けます。時に、私たちは盲目的にその目標を掲げているかもしれません。タイでの経験は、自分の視野を広げ、自身や日本の置かれている立ち位置を客観的に捉え直すことに大いに役立ったといえます。CA6の対象国が自分の関心に直接的に結びつかないからといって、そこでの学びが全く無駄になるわけではありません。

 

タイに滞在している期間は、目前の“タイ”を見つめていましたが、終わってみれば自分自身を捉え直す機会でもありました。タイの地方学校を見学して教育が持つ意味について考えたり、様々なキャリアを歩む人々と交流して自分自身の今後のキャリアを考えたり、タイの街中に溢れる日本製品や日本文化(食、言語、漫画など)に触れて日本人としてのアイデンティティを再認識したり。私にとって、今回が初めての留学かつ海外での長期滞在だったこともありますが、行ってみないと分からないことだらけです。だから、打算的でもいいじゃないってことです。その意味で、CA6はとても良い機会だと思います。

 

さて、あまり耳あたりのいい言葉ばかり書くのも気が引けますが、打算的にCA6に参加した結果としては、想像以上に学びを得ることができました。びっくりです。楽しい経験になるかどうかは分かりませが、少なくとも意味あるものになることは間違いないでしょう。興味があるのであれば、思い切って飛び込んでしまえばいいと思います。行ってみなければ分からないですから。

タイ、とっても素敵な国ですよ。

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